2026年、東京23区の民泊規制は加速度的に厳格化しています。4月1日に墨田区・葛飾区の新条例が施行され週末限定営業が始まったのに続き、千代田区・渋谷区は7月1日施行の条例改正で管理者常駐型の全面禁止区域拡大や家主不在型の実質禁止へ。江戸川区も3月31日に条例を制定し7月1日施行が確定。さらに豊島区は12月から年間120日制限、大田区もガイドライン大幅改正と、規制の波が23区全域に広がっています。
本記事では、全23区の民泊新法(住宅宿泊事業法)上乗せ条例を比較表付きで完全網羅。旅館業法(簡易宿所)との制度比較も含め、民泊オーナーが今すぐ把握すべき情報を解説します。
🆕 2026年4月更新:前回(2月版)からの主な変更点
- 千代田区:条例改正(7月1日施行)。文教地区等で管理者常駐型も含め全期間禁止に
- 渋谷区:条例改正(7月1日施行)。住居地域追加、家主不在型を実質禁止、事前周知60日前に
- 江戸川区:条例が3月31日に正式制定。7月1日施行確定
- 大田区:ガイドライン改正(4月1日施行済)。駆けつけ徒歩10分、説明会2回義務
- 北区:条例案パブリックコメント実施中(3/23〜4/21)
- 墨田区・葛飾区:4月1日施行済み。詳細運用情報を反映
この記事の5つの重要ポイント
- 千代田区:2026年7月1日改正施行。文教地区・学校周辺・人口密集区域で管理者常駐型を含む全形態が全期間禁止に大幅強化
- 渋谷区:2026年7月1日改正施行。制限区域に住居地域を追加、家主不在型を実質禁止、事前周知を7日前→60日前に厳格化
- 墨田区・葛飾区:2026年4月1日施行済み。墨田区は原則金曜正午〜日曜正午が営業可、葛飾区の家主不在型は月〜金が原則不可など週末限定(例外・経過措置あり)
- 豊島区:2026年12月16日適用開始。年間120日(春・夏・冬休み限定)に制限。施行日以降は既存施設にも新ルールが適用
- 江戸川区:条例制定済み(3月31日)、2026年7月1日施行確定。事前説明義務化・標識掲示義務など
民泊新法 vs 旅館業法:制度の根本的な違い
東京23区で宿泊事業を営む場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)と旅館業法(簡易宿所営業)の2つの制度があります。どちらを選ぶかで営業日数・エリア・コストが大きく異なります。
| 比較項目 | 民泊新法(届出制) | 旅館業法・簡易宿所(許可制) |
|---|---|---|
| 年間営業日数 | 180日以内(上乗せ条例でさらに短縮) | 365日(制限なし) |
| 住居専用地域での営業 | 可能(設備・居住要件あり。条例で曜日制限) | 原則不可(第一種・第二種低層など)。用途地域等の確認必須 |
| 手続き | 届出制(※実務上1〜2ヶ月かかる場合あり) | 許可制(1〜2ヶ月) |
| フロント設置 | 不要 | 常時対応必須(ICT機器等での24時間代替要件緩和あり) |
| 初期費用の目安 | 規模等で大きく変動(消防設備等で数十万円〜) | 数百万円〜(設備等の改修費) |
| 客室面積要件 | 3.3㎡×宿泊者数以上 | 3.3㎡×定員(※定員10人未満の場合。10人以上は33㎡以上) |
| 定期報告義務 | 2か月ごと(年6回) | 不要(※自治体により異なる場合あり) |
| 向いている用途 | 副業・遊休資産活用 | 本格的な宿泊事業 |
出典:観光庁「住宅宿泊事業法について」、厚生労働省「旅館業法の概要」
東京23区 民泊新法 上乗せ条例 完全比較表
以下の表は、各区の住宅宿泊事業法に基づく上乗せ条例の営業制限区域・営業可能曜日・実質年間日数・管理者要件・施行日をまとめたものです。赤字は2026年の新規制定・改正です。
| 区名 | 制限区域 | 営業可能曜日・期間 | 日数目安(※休日扱いで変動) | 事前周知 | 施行日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 千代田区 4月更新 | 文教地区等・学校周辺・人口密集区域 | 7月改正後:上記区域は全形態・全期間禁止 その他区域:従来通り | 大幅制限 | 住民+地域関係者に説明 | 改正:2026年7月1日 | 常駐型・駆けつけ型も禁止対象に。施行前届出は旧規定適用(経過措置) |
| 中央区 | 区内全域 | 土曜正午〜月曜正午のみ | 約104日 | 届出7日前に説明会 | 2018年6月 | ビジネス目的での参入障壁が非常に高い区 |
| 港区 | 家主不在型は区内全域 | 家主居住型:制限なし 不在型:土正午〜月正午 | 居住型180日 不在型約120日 | 要 | 2018年6月 | 年末年始・祝日は不在型も営業可 |
| 新宿区 | 住居専用地域のみ | 住居専用地域:金正午〜月正午 その他:制限なし | 住専約156日 その他180日 | 届出7日前に書面周知 | 2018年6月 | 住居専用地域外は比較的緩い |
| 文京区 | 住居専用・住居・準工業・文教地区 | 制限区域:月〜金は制限あり 制限区域外:制限なし | 制限区域約100日 その他180日 | 届出15日前に説明会 | 2018年6月 | 事前相談は予約制 |
| 台東区 | 管理者非常駐の場合のみ | 常駐型:制限なし 非常駐型:土日祝+年末年始のみ | 常駐型180日 非常駐型約120日 | 要 | 2018年6月 | 30分以内駆けつけ要件 |
| 墨田区 | 区内全域 | 金正午〜日正午のみ | 約100日 | 半径20m住民に説明+標識掲示 | 2026年4月1日施行済 | 施行済。既存届出は経過措置あり。常駐等は例外。旅館業も同時改正(常駐義務新設)。説明範囲10m→20mに拡大 |
| 江東区 | 区内全域 | 土正午〜月正午のみ | 約104日 | 周知報告書+住民名簿提出 | 2018年6月 | 管理形態問わず全域一律制限 |
| 品川区 | 商業・近隣商業地域以外 | 住居系:土正午〜月正午 商業系:制限なし | 住居系約104日 商業系180日 | 要 | 2018年6月 | 文教地区は商業地域でも制限あり |
| 目黒区 | 区内全域 | 金正午〜月正午のみ | 約156日 | 15日前に書面周知 | 2018年6月 | 苦情記録3年保存義務 |
| 大田区 4月更新 | 学校100m以内・住居専用地域 | 学校100m以内:金正午〜月正午 家主居住型:制限なし | 地域により異なる | 説明会2回+半径20m周知 | 2018年6月 GL改正:2026年4月 | GL大幅改正(4月施行済)。駆けつけ徒歩10分、ゴミ回収3日に1回、説明会2回義務。特区民泊・旅館業も対象 |
| 世田谷区 | 住居専用地域 | 住居専用:土正午〜月正午+祝日・祝前日 その他:制限なし | 住専約120日 その他180日 | 要 | 2018年6月 | マンション管理規約の確認必須 |
| 渋谷区 4月更新 | 文教地区+住居専用地域 +住居・準住居地域(7月追加) | 7月改正後:制限区域で家主不在型は実質禁止 家主居住型(5室以下等)のみ例外 | 大幅制限 | 届出60日前に周知 | 改正:2026年7月1日 | 家主居住型(生活本拠が同一建物内等・5室以下)のみ例外。廃棄物契約書提出義務。施行前届出は旧規定適用 |
| 中野区 検討中 | 実施制限区域(住居系用途地域等) | (区域内)平日不可/金・土・日・祝日のみ | 約160〜170日 | 要 | 2018年6月 | 条例改正を検討中。2026年3月に意見交換会実施、2027年4月施行を目標に議会提出予定 |
| 杉並区 | 住居専用地域(区の約8割) | 住居専用:金土日祝・祝前日のみ その他:制限なし | 住専は制限あり その他180日 | 要 | 2018年6月 | 家主居住型は規制対象外の場合あり |
| 豊島区 | 区内全域+新設禁止エリア(区の約7割) | 春休み(3/15〜4/10) 夏休み(7/1〜8/31) 冬休み(12/15〜1/14)のみ | 120日 | 要 | 2026年12月16日 | 改正内容の適用開始は2026年12月16日。過料5万円。新設禁止エリア拡大。既存届出への適用範囲・附則の扱いは区公表資料(条例/要綱)で最終確認。 |
| 北区 | (検討中) | 未確定 | 当面180日 | - | 未定 | 条例案のパブリックコメント実施中(3/23〜4/21)。条例制定に向け大きく進展 |
| 荒川区 | 区内全域 | 土正午〜月正午+祝日のみ | 約120日 | 要 | 2018年6月 | 2026年1月下旬、住宅宿泊事業法違反(虚偽報告等)の疑いで書類送検と報道 |
| 板橋区 | 住居専用地域 | 住居専用:曜日・期間制限あり その他:制限なし | 地域により異なる | 要 | 2018年6月 | 詳細は区保健所に要確認 |
| 練馬区 | 住居専用地域・田園住居地域 | 金正午〜月正午+祝日等 | 住居系約150日 その他180日 | 7日前に書面周知 | 2018年6月 | 住居系の実施制限あり(運用日は区資料で確認)。住居専用地域等(田園住居地域を含む)は条例制定時(2018年)から実施制限の対象 |
| 足立区 | 区内全域(家主同居除く) | 月正午〜金正午は営業不可 | 約165日 | 要 | 2018年6月 | 金正午〜月正午+祝日が営業可能 |
| 葛飾区 施行済 | 実施制限区域における家主不在型等 | 月正午〜土正午は原則営業禁止 | 大幅制限 | 要 | 2026年4月1日施行済 | 施行済。家主居住型や商業/工業系は例外規定あり。既存施設にも追加責務あり。オンライン届出が基本 |
| 江戸川区 4月更新 | 住居地域等 | 事前説明義務化 標識掲示義務 | 制限あり | 対面説明義務 | 2026年7月1日 | 条例・規則とも3月31日制定済み。事前説明会or戸別訪問義務、共同住宅は区交付標識を掲示。GL・手引き更新予定 |
※ 2026年4月時点の情報です。条例は随時改正されるため、最新の規制状況は各区保健所にご確認ください。
※ 各区の条例原文は、地方自治研究機構(RILG)等の条例一覧ページもあわせてご参照ください。
2026年の注目区を詳しく解説
千代田区・渋谷区 ── 7月改正で大幅に規制強化(実質禁止へ)
2026年7月1日、千代田区と渋谷区で厳しい内容の改正条例が施行されます。
千代田区では、これまで「不在型」の全期間禁止にとどまっていた文教地区等(学校周辺100mや人口密集区域など)について、「管理者常駐型」や「駆けつけ型」も含めて全形態の民泊が全期間禁止へと大幅に規制が強化されました。
渋谷区では、従来の文教地区等に加え、新たに「住居地域」および「準住居地域」が制限区域に追加されました。制限区域内では、家主同居型の一部(5室以下、生活本拠が同一建物内などの要件あり)を除いて、家主不在型民泊が実質的に営業禁止となります。また、事前周知の期限も届出の7日前から60日前へ大幅に延長され、廃棄物処理契約書の提出も義務付けられるなど、新規参入のハードルが極めて高くなっています。
墨田区 ── 原則週末限定、既存施設には経過措置あり
2025年12月10日、墨田区議会は「墨田区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」を全会一致で可決しました。2026年4月1日施行で、原則として金曜正午〜日曜正午のみ営業可能(日曜正午から金曜正午は不可)となります。
墨田区の届出数は2025年11月時点で約1,950件(23区内2位)と全国有数の規模です。浅草に隣接し民泊が急増した結果、騒音等のトラブルが深刻化し可決に至りました。
重要なポイントとして、施行日前に届出済みの既存施設は、一定の要件下で新ルールの一部が除外される経過措置が設けられます。また、管理者が施設内に常駐する場合等も適用除外となる例外規定があります。ただし、同時に旅館業法施行条例も改正され、常駐義務が新設されており、「民泊から旅館業許可に切り替えるケース」への抜け穴対策も行われています。
葛飾区 ── 家主不在型を重点的に制限
2025年12月17日に条例が公布され、2026年4月1日に施行されます。
葛飾区の最大の特徴は、管理者が常駐しない「家主不在型」への厳しい制限です。実施制限区域では原則として月曜正午〜土曜正午の営業が禁止され、週末寄りの運用となります。ただし、家主居住型(ホームステイ型)や、商業・工業系の一部区域では扱いが異なります。さらに、2026年3月31日までに届出された既存施設には当面適用除外とする経過措置が予定されています。
豊島区 ── 年間120日、既存施設にも新ルール適用
豊島区は2025年12月2日に条例改正案を全会一致で可決。2026年12月16日から適用開始です。
当初は年間84日(夏・冬休みのみ)という案でしたが、パブリックコメントを経て120日に修正。営業可能期間は春休み(3/15〜4/10の27日間)・夏休み(7/1〜8/31の62日間)・冬休み(12/15〜1/14の31日間)の合計120日に限定されます。
特に注意すべき点は、改正内容の適用開始が2026年12月16日である点です(※既存の届出済み施設への適用範囲や附則の扱いは、区公表の条例・要綱資料で必ず最新状況の確認を継続してください)。違反者には5万円以下の過料が科されます。また、新設禁止エリアが拡大され、区の約7割(住居専用地域など)が対象となります。
江戸川区 ── 7月1日施行確定。事前説明と標識掲示を義務化
これまで民泊の上乗せ規制がなかった江戸川区ですが、2026年3月31日に条例が制定され、2026年7月1日の施行が確定しました。
営業可能日数の制限こそ見送られましたが、届出・変更前の対面による事前説明(説明会または戸別訪問)が義務化されたほか、共同住宅で営業する場合には区が交付する専用の標識を掲示することが追加で義務付けられました。今後公表されるガイドライン等に沿った厳格な運用が求められます。
大田区 ── ガイドライン大幅改正で駆けつけ「10分以内」に
大田区では2026年4月1日より、特区民泊・住宅宿泊事業・旅館業に関するガイドラインおよび制度運用が改正・施行されました。
近隣トラブル防止のため、近隣住民への説明会が2回以上義務化され、周知範囲も従来の半径10mから半径20m及び街路に面する世帯に拡大されました。さらに、緊急時の駆けつけ体制が「公共交通機関で30分以内」から「徒歩10分以内」へと大幅に厳格化され、ゴミの回収頻度も「3日に1回以上」と強化されています。
民泊オーナーが今すぐやるべき5つのアクション
- 所在区の保健所に最新規制を確認 ── 条例は随時更新されます。特に墨田区・葛飾区は2026年4月、豊島区は12月に大きく変わります
- 収支シミュレーションの見直し ── 週末限定で年間約100日の場合、従来の180日と比較して(営業可能日数ベースで)収入は約55%に減少します
- 旅館業法への切替を検討 ── 365日営業可能な簡易宿所許可への切替も選択肢。ただし墨田区のように旅館業法も同時改正する区があるため注意
- 特区民泊の活用 ── 大田区の国家戦略特区民泊は日数制限なし(※ただし2026年4月から徒歩10分駆けつけ・説明会義務化等の規制強化があり、コスト面も含めて慎重な比較検討が必要です)。
- 違法民泊対策の強化に備える ── 観光庁が予約サイト等と連携し、無届け物件等を排除するデータ連携システムの運用開始を方向性として検討しています(方針・報道等)
まとめ
2026年は東京23区の民泊規制が大きな転換期を迎える年です。4月の墨田区・葛飾区の週末限定営業開始に加え、7月には千代田区・渋谷区の大幅な規制強化(家主不在型の実質禁止等)や江戸川区の条例施行が控えています。さらに豊島区の120日制限など、全域で規制強化の波が押し寄せています。
一方で、旅館業法への切替・特区民泊の活用・北区など検討段階の区での早期参入など、対応策は存在します。重要なのは、正確な情報を早期に把握し、計画的に対応することです。
法的注意書き
本記事の内容は2026年4月時点の最新公開情報に基づいており、法律上のアドバイスを構成するものではありません。条例は随時改正・施行されますので、実際の規制内容は必ず各区の条例・規則・保健所の最新の運用ガイドラインに従ってください。具体的な事業への影響や手続きについては、管轄の保健所または行政書士等の専門家へのご相談をおすすめします。
出典・参考
- 住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号) ── 観光庁
- 旅館業法(昭和23年法律第138号) ── 厚生労働省
- 千代田区「千代田区住宅宿泊事業の実施に関する条例」(令和8年7月1日施行)
- 渋谷区「渋谷区住宅宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例」(令和8年7月1日施行)
- 墨田区「住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」(令和8年4月1日施行)
- 葛飾区「住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」(令和8年4月1日施行)
- 豊島区「住宅宿泊事業の適正な確保に関する条例」(令和8年12月16日施行)
- 江戸川区「江戸川区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」(令和8年7月1日施行)
- 大田区「大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業 ガイドライン」(令和8年4月改正)
- 北区「東京都北区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例(案)」パブリックコメント(令和8年3月)
- 中野区「中野区住宅宿泊事業の適正な運営を確保するための措置に関する条例」改正に係る基本的な考え方(案)(令和8年3月)
- 観光庁「違法民泊対策における対応指針」「住宅宿泊事業のデータ連携について」等
- 地方自治研究機構(RILG)「住宅宿泊事業法に基づく条例の制定状況」